三太・ケンチク・日記 -7ページ目

「メッセージ・イン・ア・ボトル」を観た!


いま、BS2でジュリエット・ビノシュの「ショコラ」を見終わったばかりです。ジュリエット・ビノシュはいろいろ観ましたが、なんと言っても「ダメージ」ですね。その話をすれば、際限なく長くなるので止めにしておきます。もう何度となく観た映画ですが、朝、新聞の予告欄を見たら、なんと、ジョニー・デップが出ていると書いてあるんですね。なにしろ僕は、ジョニー・デップは「ネバーランド」で初めて観たとずっと思っていたんですが、そんなわけで確認のためもあって観たわけですけど、いつ観ても気持ちのいい映画ですね。そうそうフランスの映画かと思っていたら、英語で話していましたね。


ショコラ」はまた別の機会に書くとして、これから書くのは、2、3日前に、やはりBS2で観た1999年のアメリカ映画「メッセージ・イン・ア・ボトル」です。何年か前に話題になったという記憶はあるんですが、まさかケビン・コスナーが主役で出ているなんて知りませんでした。そしてなんと、ポール・ニューマンがその父親役で出ているんですね。これがまたいい味を出しているんですね。若い頃のポール・ニューマンもいいですが、歳をとってからの方がもっといい男になっていますね。


そして、なんともはや、原作者が「きみに読む物語」と同じ人だったんですね。どおりで同じような大人の恋愛映画だと思いましたよ。ニコラス・スパークスというんだそうです。「きみに読む物語 」は、「マディソン郡の橋」を越えて、全米1200万人が愛に震えたという映画でした。泣かせる勘所を巧く捕まえているんですね、この作者は!「メッセージ・イン・ア・ボトル」の方は、「きみに読む物語」ほど話が入り組んでいません。わりとストレートです。こちらも負けずと、「マディソン郡の橋」を超える大人のラブストーリーとして全米を泣かせた感動作、とありますが。ということは、この手の映画の基準はなんと言っても「マディソン郡の橋」なんですね。



調査員として新聞社で働くテリーサは海岸でジョギング中、手紙の入ったボトルを拾う。それは亡くなった女性にあてた誠実で愛情に満ちた手紙であった。手紙に感動したテリーサだったが、新聞社が勝手に手紙を新聞に載せてしまったことで読者の反響が大きくなり、自らその手紙の書き主に会いに、彼の街へ出かける。そこでテリーサは手紙の持ち主ギャレットと知り合い、恋に落ちるが、彼女は手紙のことを話せないでいたのだった。


大人の恋愛映画もいろいろありますが、ケビン・コスナー船大工?で、前の奥さんのしがらみから抜けきらない、素朴で不器用な生き方の男を上手く演じています。地味なこんな役もやるんですね。それを叱咤激励する親父役ポール・ニューマン、これは抜群にいいですね。一方は漁村の野暮ったい船大工で、一方が一流紙の記者というか調査員という、まあ、都会のキャリアウーマンですね。ありがちな設定ですが。しかも、遠距離恋愛ときているので、はらはらやきもきさせるのも、こういう映画の常套手段ですね。出会いから愛が生まれるまでの展開が、描き切れていないという声もありますが、二人は恋をしちゃったんだから仕方がない、と思わなくちゃ。


でも、最後がよくない。ケビン・コスナーが嵐の海で人を救助するために、自分の命を落とす最期は納得できない。どうせならハッピーエンドで終わって欲しかった。死んでからでは、ボトルの手紙に何が書いてあろうと遅すぎます。ケビン・コスナーの相手役、離婚したばかりで、一人息子を懸命に育てる女性記者役のロビン・ライト・ペン颯爽と歩く姿が素敵ですね。初めて見た女優かと思ったら、なんと「フォレストガンプ」に出ていたんですね。風景はすばらしく、海もヨットも美しい。映画館の大きなスクリーンで観たかったですね。久しぶりに上質の大人の恋愛映画を観ましたよ。って、いつも、その手の映画しか観ていないんじゃないの、という声が!


関連記事:あなたは「きみに読む物語」を観ましたか?

画像の使用容量について

フォルダ内の画像の使用容量が85%を超えて、残り僅かになってきました。

この後、どうしたらいいのでしょうか


お知らせ:上記の解決策として

・8月30日、とりあえずやっちんお薦めの「コタン」を入れてみました。

・8月31日、アメブロでもうひとつブログを作成し画像の保管用としました。

しばらくは併用してやってみます。

ご協力、ありがとうございました。

前田虹映のご子息、稀さんに会う!

東京ステーションホテル

「僕は前田虹映の息子です。ぜひお話したいので、電話をください。」という突然の書き込み、そして「夏には東京へ行きますから、その時にお会いしましょう」という話からはや半年、時が過ぎるのは早いですね。携帯が鳴り、久しぶりに聞き慣れた前田さんの声が電話の向こうから聞こえます。「今度の*曜日は、どうですか?」「はい、空けておきます。」「じゃあ、前の日にまた電話をします。」ということでした。ところが、いつものダラダラ癖で、やりかけていた仕事が終わらなくて、*曜日一杯かかってしまい、お会いする*曜日の午前中に届けなければならないことになってしまった。前日の電話で「午前中はどうですか?」と前田さんから言ってきたんですが、僕の方の都合で午後にして貰いました。


東京駅復元模型

待ち合わせは「東京ステーションギャラリーの入り口の前で2時に」ということにしました。前田さんとお会いしたら「東京ステーションホテル」でお茶でも飲みながらお話を伺うという僕の方の段取りでした。「東京駅復元工事」に取りかかるとしばらくはホテルには入れない、ということもあって、その前にホテルに入っておきたかったこともあります。2時にステーションギャラリーの入り口へ行ったらもう前田さんが来ていました。電話で服装は聞いてはいましたが、柄物のTシャツとジーパンでお歳のわりにはお若く見える、僕が想像していた人と寸分違わない人でした。車と引き手が付いた重そうなバックを携えていました。


熱海温泉観光図

そのままホテルの2階へ上がり、ちょうどランチタイムが終わったレストランでコーヒーをいただきながら、約1時間半は話し込んでしまいました。といっても、ほとんど僕は聞き役でしたが。その間、僕はコーヒーを3杯も飲んでしまいました。「吉田初三郎」や「前田虹映」に関連して、生い立ちのこと、ご家族や親類のこと、お仕事のこと、もちろん「鳥瞰図」のこと等々、僕の根ほり葉ほりの質問責めにも、嫌な顔ひとつせずに笑顔で答えてくれました。時にはバックを開いて、アルバムや文献や戸籍謄本までをも取り出して、指さしながら話してくれました。ちなみに「吉田初三郎」が前田さんのお名前「稀(まれし)」の名付け親だそうです。


鹿児島観光図

愛知県小牧市のお住まいの前田さんは、息子さんのいる横浜で年に1回1週間ぐらいウィークリーマンションを借りて、ご夫婦で東京周辺を見て回ったりしているそうです。そして、ご自分が作った「前田虹映」のホームページで知り合った研究者の方々とお会いして、「前田虹映」や「鳥瞰図」の資料を蒐集しているそうです。父親の「画家」という職業を嫌い、定年退職まで一切口にすることのなかった父親の「画家」としての業績を、ある新聞記事を見て父親の偉大さを初めて知り、考えが変わったそうです。昭和20年に父親である前田虹映が亡くなられてから相当なご苦労があったようですが、息子と乗り越えなければならない対象である父親との確執は、いつの時代にも身につまされるものがあります。


前田虹映ホームページ

赤レンガの東京駅を愛する市民の会


過去の記事:
吉田初三郎の一番弟子「前田虹映」
鳥の目になって「迎賓館」を見る

「ピアノマン」は有名人病だった=独誌が報道


【ベルリン30日】今年4月に英南部の海岸でずぶぬれでさまよっているところを保護され、「ピアノマン」の異名を取ったドイツ南部バイエルン州出身の男性は、有名人になりたがっていたものの、ショービジネス界入りに挫折していたことが明らかになった。ドイツ誌シュピーゲルが伝えた。同誌によると、この男性はドイツのテレビ局あてにショー番組に出演したいとの手紙を多数出していたが、すべて断られていた。男性は英国で保護されてから4カ月間一言も口を利かない一方、卓越したピアノの腕前を披露したと報道されたが、実はピアノが大して弾けないとの疑いが出ている。


男性は十代の頃は早熟で、校内誌や地元紙にブリトニー・スピアーズさんらスターに関する辛らつなコラムを連載。また、チェコのラジオ番組に20秒間出演したことを自慢していたが、ショービジネス界入りの努力はことごとく失敗に終わった。学校時代の友人によれば、男性は同性愛者で、小さな田舎町では居心地の悪さを感じていたようだったという。男性はその後、町を出て兵役の代わりに公共サービスの仕事に就いていたが、今年3月にフランスを経て英国に渡った動機は不明。英大衆紙デーリー・ミラー紙は先週、男性が発見された時は、自殺を試みていた最中だったと報じた。
時事通信: 8月30日

「SLあそBOYを追っかけろ!」という記事が凄い!


現役最古の国産SLが引退」というタイトルで下記の記事が!
現役最古の国産蒸気機関車として、JR豊肥線の熊本―宮地間を走ってきた「SLあそBOY」がついに引退。全国のファンが集まって別れを惜しんだ。老朽が理由だが、修復で復活の道を探るという。(熊本駅)
時事通信社:8月28日



単に画像がきれいだったので、7月3日にこのブログで、「最後の現役SLあそBOY引退へ」、という記事、というか、新聞記事の転載したものを載せました。その記事に、「凱ママ」さんからコメントトラックバックがありました。「SLあそBOYを追っかけろ! 」です。これが何ともはやお見事凄いの一言です。じぃじとばぁばと子どもを引き連れて、SLあそBOYを追いかけ回して、しっかりと記録にしています。画像が大きく、抜群にきれいです。臨場感あふれる記事がまたいい!しかも、動画もあります。これがまた素晴らしい。上の記事が出たのにあわせて、是非とも皆さんに観ていただきたく、 ここに勝手にご紹介しちゃいます


注目の記事:「SLあそBOYを追っかけろ!

過去の記事:「最後の現役SLあそBOY引退へ

子どもたちの未来を救うTシャツアート展


古代エジプト展を見終わり出口へ向かうところで、地下3階まで吹き抜けの彫塑室を見下ろしてみると、洗濯物がいっぱい干してある、じゃなくて、なんと壮観、1000枚のアートTシャツが会場を埋め尽くしています。美術作家から一般の子どもや大人まで、チャリティ企画に賛同して貰った多くの方々の個性豊かなオリジナルアートTシャツ作品です。「子どもたちの未来を救うTシャツアート展」でした。



会場にて1点1500円で販売しており、売り上げは社会福祉法人「子どもの虐待防止センター」に寄付されるそうです。一緒に行った家人が入り口の受付で立ち話をしていました。自分の関係する福祉団体との関連で、主催者側のどなたかを知ってるようなことを言ってました。いずれにせよ、地下3階まで下りて、この壮大な、洗濯物風の展示、ひとつひとつ見るとホントに個性豊かです。



ちなみに、社会福祉法人「子どもの虐待防止センター 」は16年前に設立された民間団体で、育児に悩む親電話相談とか、虐待している親のグループ治療や、虐待されて心が傷ついている子供の治療も行っているようです。



東京都美術館で「ルーヴル美術館所蔵・古代エジプト展」を観る!


どうして この時期、二つの「古代エジプト展」なのか?意図したものなのか、偶然なのかはまったく分かりません。ひとつは、上野の東京都美術館で開催中の「ルーヴル美術館所蔵・古代エジプト展」ですが、もうひとつは、大丸ミュージアムの「ドイツ・ヒルデスハイム博物館所蔵・古代エジプト展」です。大丸の方は7月28日から8月28日なので、会期は僅か1ヶ月です。こちらは、エジプトと言えばこの人、吉村作治さんの監修のようです。一方、東京都美術館で行われている「ルーブル・古代エジプト展」は、8月2日から10月2日まで、2ヶ月間です。こちらの方がゆっくり見られるのではないかと思い、都美術の「ルーブル・古代エジプト展」の方へ行ってきました。東京駅大丸は、確か「小磯良平展」を見に行きましたが、混んでましたね。落ち着いて見られないんですよ、デパートの展示会は!



都美術へはたぶん年に2回ぐらいは見に行ってますね。このブログにも書きましたが、最近では「アール・デコ展」や、「フィレンツェ芸術都市の誕生展」を見ましたね。その前は、「マルモッタン美術館展」、「大英博物館の至宝展」、「池田満寿夫の世界展」、「アール・ヌーヴォー展」も見ました。その前、1999年8月から10月ですが、「大英博物館・古代エジプト展」というのを見てるんですよ。その時は確か「ロゼッタ・ストーン」や「ミイラ」が展示されていました。いや、「至宝展」の方だったかな?記憶が曖昧になっています。


どちらにせよ、都美術だったと思いますけど。実は、だいぶ前ですけど、パリのルーブル美術館のエジプト部門と、ロンドンの大英博物館のエジプトの間は、それぞれ一度だけ駆け足で見たことがあります。大英博物館の「ロゼッタ・ストーン」や「ミイラ」も、触ってしかも写真も撮ってきましたが、日本に来たときには、しっかりとガラスのケースに収められていました。今回の展示では、ヒエログリフとの関連が深い「ロゼッタ・ストーン」は、実物大の写真が壁に掲示してあり、それについてはやや興ざめでした。

センウセルト3世座像

この度、ルーヴル美術館の古代エジプトコレクションが日本で初めて本格的に公開されます。数の豊富さと室の高さでは名高いこのコレクションですが、古代エジプトを解明する上で、他にない輝かしい側面を持つことは意外に知られていません。19世紀、砂に埋もれた古代エジプト文明を再発見し、知られざる過去に光を当てたのは、ルーヴル美術館の初代館長、ドゥノンをはじめ、ヒエログリフ(神聖文字)の解読者として有名なシャンポリオン、カイロ博物館の前身を創設したマリエットなどルーヴルの学者たちでした。

約5万5千点に及ぶ膨大なルーヴルのエジプトコレクションは、世界的に見ても、ナイル川流域の古代人とその生活を研究するための主要な情報源と言えます。本展覧会は、エジプト学に多大な功績のあったルーヴルの学者たちゆかりの遺物を紹介すると友に、彼らが解明した「古代エジプト人とその生活」に焦点を定め、選りすぐりの名品約200点を通して、古代エジプト人の生活感や人間像を紹介いたします。シャンポリオンたちが開いた古代への扉を通して、古代エジプト人の人々と対話してみませんか?


カバの小像

と、まあ、いただいたチラシの裏にはこう書いてあるんですが、やはり輸送や展示スペースの関係か、展示されているものはほとんど「小物」ばかりで、「エジプト」というイメージからはやや迫力に欠けましたね。例えば「シェドホルの石棺」は蓋しか来ていなくて、重量のある石棺そのものは来ていません。まあ、5万5千点のうちのたった200点ですから、そういう意味では仕方がありませんが。


小物」を非難しているわけではなく、いいものもありました。例えば「カバの小像」、思ったより小さかったのですが、色といい艶といい、素晴らしいものでした。ルーヴルでも大英博物館でも、エジプト関係の展示室天井高の高い、もっと見通しの利く広々とした部屋で、大きなものがゴロゴロ展示してあったような気がします。日本の美術館は、「エジプトもの」には向かない美術館なんですね。というか、最初から日本の美術館は、「エジプトもの」は想定の範囲外なんでしょうね。


「ドイツ・ヒルデスハイム博物館所蔵
古代エジプト展 甦る5000年の神秘」
大丸ミュージアム・東京
2005年7月28日(木)~8月28日(日)







関連記事:
早大調査隊、エジプトで未盗掘のミイラ発見!
過去の記事:
東京都美術館で「アール・デコ展」を観る!
フィレンツェ―芸術都市の誕生展

「魂萌え!」と「風味絶佳」が受賞!

婦人公論文芸賞、桐野夏生さんの「魂萌え!」に
第5回婦人公論文芸賞(中央公論新社主催)は22日の選考会で、桐野夏生さん(53)の「魂萌(たまも)え!」(毎日新聞社)に決まった。受賞作は、夫の急死で世間の荒波に投げ出された熟年世代の主婦が、伴侶の裏切りを知り、様々な人生模様と出合いながら自立していく長編。選考会では、「59歳の主婦の内面がよく描けている。現代的テーマで小説に気迫がある」「魂の成長小説」などと評価された。副賞100万円。授賞式は10月21日、東京・丸の内のパレスホテルで。
読売新聞:8月22日


谷崎賞に町田康氏「告白」・山田詠美氏「風味絶佳」
第41回谷崎潤一郎賞(中央公論新社主催)は23日、町田康さん(43)の「告白」(中央公論新社)と山田詠美さん(46)の「風味絶佳」(文芸春秋)の2作に決まった。副賞各100万円。「告白」は、河内音頭にも歌われる明治時代の猟奇的事件を題材に、殺人者の内面を徹底的に描いた。読売新聞に昨年3月から1年間連載後、単行本化された。「風味絶佳」は、とび職や清掃業、火葬業など肉体労働に従事する男たちの六つの恋愛を描いた短編集。選考会では「告白」について、「『大菩薩峠』のような非常に大きな作品。テーマと文体が見事に一致した」、「風味絶佳」は「一編一編がオードブルの味わい濃密な詩情を醸し出している」と評価された。贈呈式は10月21日午後6時から、東京・丸の内のパレスホテルで開かれる。
読売新聞:8月23日


町田康の「告白」、読んでないですね。2000年の芥川賞を受賞した「きれぎれ」は読みましたが。内容紹介によると、「人はなぜ人を殺すのか――河内音頭のスタンダードナンバーで実際に起きた大量殺人事件<河内十人斬り>をモチーフに、永遠のテーマに迫る渾身の長編小説。殺人者の声なき声を聴け!」というものらしい?本の題名は知ってはいましたが、 あまり関西系は好きでないので、今まで敬遠していました。


過去の記事はこちら
桐野夏生の「魂萌え!」を読んだ!
山田詠美の短篇集「風味絶佳」を読んだ!

川上弘美の「龍宮」を読む!


北斎」、「龍宮」、「狐塚」、「荒神」、「鼹鼠(うごろもち)」、「(とどろ)」、「島崎」、「海馬(かいば)」という8つの物語が収録されています。山田詠美の「風味絶佳」のような連作短編集という形式ですが、中身はまったく異なります。表紙からして不気味な感じが漂います。「あなたは、ほんとうはここにいないものでしょう」。この世のものとも思えない妙な浮遊感の漂う生き物」が描かれています。「どうぞ開けてみてください。さみしくいとおしい物語玉手箱を。」この世のものかあの世のものか、そんな不思議な感じのする作品が並びます。題名が漢字二文字または一文字で、硬質な印象を与えます。もちろん、著者が意図してのことではあるにしても。


北斎」、「にいちゃん」と年の頃は50見当の男に呼びかけられる。「金、持ってるか。おもってくれよ」と言われ、男の引くままに従う。「おれはその昔蛸であった」蛸の2年は人間の200年、女好きの蛸につきまとわれ、飲み屋をはしごさせられる。「龍宮」、人の膝の丈にも満たない、14歳でもあり100歳にも見える、霊力を持つ曾祖母イト、「あんたは平凡だね」平凡ということが嫌いらしい。揚げたてのカツレツが大好き。「いたしましょうよ」と行き会うものに交合をせまる。「ひいばあさん、あなたは、ほんとうはここにいないものでしょう」と私が聞くと、イトはうなづいた


狐塚」、アブラゲが好きでときどき「ケーン」と言う93歳の正太と、週にのべ15軒を廻る年寄り専門の53歳のヘルパーの物語。ヘルパーとして通うことを止め、代わりに正太の家に週2晩、泊まることになる。「君の裸を見せてください」「いいわよ」と私は答える。「荒神」、心がけのいい女の台所だけにいる荒神さま、壁のしっくいを食べてると、荒神さまに注意される。コンビニで梅ガムとカップラーメンを万引きする。学習教材のセールスをしているサノベさんとホテルに行き、その度に金を貰う。社宅のゴミ置き場にはイタチが出る。荒神さまがやってきて、「おまえはしあわせか」と聞かれる。


鼹鼠(うごろもち)」、カシミヤのコートを着て電車を2本乗り継いで会社に出勤する堅実実直な勤め人。「アレ」を拾ってコートのポケットに入れて家に持ち帰る。アレとは「死にもせず、生きもせず、ただそこにあって周りを浸食する者。そしてまた、自身を浸食する者。」死んだ人間を穴に落とし、じきに地上の戻る人間とそうでない人間をより分ける。「(とどろ)」、産んだ母親の顔を知らない私。5歳までいちばん上の姉イチコの乳を飲んで育つ。鳥寄せの笛を吹く二番目の姉のフタバ、20人ほどの子供たちと暮らす。気分が一定しないサンショウウオを吐き出すミツヘ、4番目と5番目のふたごのシマゴマ、そして、6番目、私の妻になったムツミと20年暮らすが、首を絞めて殺す。ムツミが死んで1年後、ナナヨと小さな小屋で暮らし始める。「もうすぐあなたは死にますよ」と言われ、二人で滝の中をどこまでも落ちていった


島崎」、7代前の先祖の男には、たぶん400歳くらい、右手の小指がなかった。会って5分くらい後に、一目惚れ。生まれてから200年以上たつのにこんなことは初めて。それから30年以上がたった。二人で旅に出る。「島の突端を島崎って言うんだよ」と、先祖は泣きながらつぶやく。愛してるのと、何回もわたしはつぶやいた。「海馬(かいば)」、世田谷のはずれに住む主婦、何人もの男に譲り渡され、子供は4人。四人目の子供は自分に似た女の子、レンタルビデオ店のアルバイト。娘が先に「行くわよ」と言い、「海になんか、何もいいことはないわよ」と言うが、でも海に帰りたい海から出たものは、いずれ海に帰る。私は海馬に戻って、娘が漂っているのを見ながら、どこまでも海を泳ぐ


川上弘美の略歴を見ると、お茶の水女子大学理学部生物学科とあります。怪しい生き物が跋扈するこれらの作品、「生物学科」か、さもありなん、とも思う。艶めかしい、邪悪な「空気感」が、全編に漂います。ありえね~。なぜか懐かしい、現代のお伽噺、ですね、これは。「狐塚」は「センセイの鞄」を彷彿させるという指摘が多くあります。それはそれとして、僕は、人間以外のものとのふれあいを描いた短篇集「神様」の系列に繋がる作品だと思います。「神様」の書き出しはこうです。「くまにさそわれて散歩に出る」。「合羽玉」は「儂には300年来の恋人がおりまして」です。ありえね~。そんな不思議な話をいとも簡単に、さりげなく書いちゃうところが、川上弘美なのであります。そして、この「龍宮」が、「センセイの鞄」とは別に川上弘美の最高傑作として位置づけられるものだと思います。


過去の記事:「センセイの鞄」は川上弘美の最高傑作なのだ!

ローリングストーンズ、または、このブログで印象に残った記事は?


英国のロックバンド、ローリングストーンズが21日夜、当地で世界ツアーをスタートした。会場は米大リーグ、レッドソックスの本拠地球場であるフェンウェイ・パーク。3万6000人の観客が詰め掛ける中、ミック・ジャガー、キース・リチャーズらが約2時間にわたり、懐かしいレパートリーを中心に20曲以上を披露した。コンサートにはカリフォルニア州のアーノルド・シュワルツネッガー知事も姿を見せたが、9月リリースのニューアルバムに収録されている曲で、米国の新保守主義に批評的な「スウィート・ネオコン」は演奏されなかった。
時事通信:8月22日



久しぶりにローリングストーンズの話題で、ちょっと興奮しています。話はガラッと変わって、先日、NHKBS2で、タイトルはなんだったか?憶えていないんですが、ビートルズ関連の番組だったので、最後まで見ちゃいました。僕にとっては、ほとんど知っていることばかりでしたが。1962年8月にそれまでビートルズでドラムを担当していたピート・ベストが、リンゴ・スターに替わったんですが、その番組はピート・ベスト側から見たドラムス交代劇の真相を探る、というようなものでした。証言していたのは当時のキャヴァーン・クラブや、ハンブルグのバーの関係者、1962年4月に亡くなった元メンバーのスチュアート・サトクリフの恋人で、ハンブルグ時代のビートルズの写真を撮っていた女性カメラマンのアストリット・キルヒヘル、等々です。もちろん、ピート・ベストもいいオジサンになってましたが、証言しています。よく「ビートルズになり損ねた男」と言われたり、そんな題名の本も出ています。結局のところ真相は、今となっては分からない、藪の中なんですが。


左がピート・ベスト、右がスチュ・サトクリフ
(撮影:アストリット・キルヒヘル)

ピート・ベストの物語をここで言いたいのではなく、またここで話はガラッと変わって、実はつい先日、僕のブログをいつも見てくれているある人から、過去の記事について、「tontonさんの記事を読んでいて、趣味というか好きなことを記事に書いていたので、意外だったので驚きましたよ」と、突然言われました。僕はなぜか瞬間的に「あ、あの、ローリングストーンズの記事かな?」と言ってしまいました。他にも人がいたので、その人との話はそれで終わってしまったのです。帰ってからこのブログでローリングストーンズの記事を探しても、記事らしい記事は見あたりません。


若い頃ニューヨークへ行ったときに、泊まったホテルの前のマジソンスクエアガーデンでローリングストーンズのコンサートがあった、さすがはニューヨークだと思った、という記事で、ちょっと書いただけなんですが。そうしてみると、まったくの僕の早とちりで、どうもその人が言っていた記事は、違う記事を指して言っていたのかもしれません。今から思えば、その人が言う記事はなんなのか、もうちょっと詳しく聞いておくべきだったと、今更ながら悔やんでいるわけです。


僕がここで言いたいのは、自分がいいと思って書いていた記事でも、他人から見ると、箸にも棒にも引っかからない、ただの駄文に過ぎない場合もあれば、もちろん、逆もあるわけです。ブログというのは、いつも「天に唾す」のようなもので、他人がどう思っているのか、記事を書いている本人には今ひとつ掴めないところがあります。一歩進めて、ブログという形式の枠内で、果たして、記事の善し悪しを計る客観的な指標はあるのでしょうか?でも、それも答えを得るのは難しそうです。後々の参考のためにも「三太・ケンチク・日記」の中で、「印象に残った記事」はこれだと言っていただけると、僕としては嬉しいのですが、これは無理なお願いかもしれません。


追記:8月22日夜8時から9時30分、NHKBS2放映

ハイビジョン特集「ビートルズ誕生秘話~ピート・ベスト・ストーリー」